「ガクチカがない」と感じたら、実績ではなく記録から探す
エントリーシートの「学生時代に力を入れたこと」で、手が止まる。全国大会もない、長期留学もない、起業もサークルの立ち上げもしていない。ほかの人は華々しい話を持っているのに、自分の一年は思い出そうとしても白い。
たぶん、ないのではなく、探している場所が表彰台に寄りすぎている。面接で聞かれるのは実績の大きさではなく、そこであなたがどう手を動かしたかのほうだ。であれば、材料は表彰台ではなく、あなたが日々いた場所に散らばっている。この記事では、ガクチカの完成文を作るのは後回しにして、話す候補になりそうな場面を拾い集めるところまでをやる。
実績で探すと、日常は引っかからない
「力を入れたこと」と自問すると、頭は自動的に「胸を張れる成果」を探しにいく。バイトを一年続けた、ゼミの資料を毎回作った、後輩の相談に乗った——このあたりは「そんなの当たり前だから」と、検索結果から自分で弾いてしまう。
弾かなくていい。当たり前にできていたことは、たいてい何かしら工夫した結果だ。「安くて量があって飽きない昼食」を学食で毎日成立させていたなら、あなたはメニューの組み合わせと財布と気分を、無意識に最適化していたことになる。それを人に説明できる形にすればいい。探すコツは、成果ではなく「面倒だと思ったこと」「自分なりにやり方を変えたこと」から入ること。
記憶ではなく、記録をめくる
思い出そうと目を閉じても、たいてい何も出てこない。人の記憶は、日常の細部を残さないようにできている。だから記憶ではなく、記録のほうを見る。
手元にある記録は、思い出すためのフックとして優秀だ。
- スマホのカレンダーとリマインダー。予定の入り方でその時期に何に追われていたかが分かる
- 写真フォルダ。何を撮ったかより「なぜそれを撮ったのか」を思い出す
- LINEやDiscordのやりとり。誰かに頼まれたこと、逆に頼んだこと
- バイトのシフト表、ゼミやサークルの共有ドライブ、家計簿アプリの履歴
一つひとつを開いて、「この週、自分は何をしていたか」を一行で書き出していく。半年ぶんもさかのぼれば、白かったはずの一年に、地味な出来事がぽつぽつ浮かんでくる。
メモの記入例
拾った場面は、その場で軽くメモしておく。凝った様式はいらない。次の4行で足りる。
いつ・どこで:3年の夏、居酒屋バイト
自分がやったこと:新人が続けて辞めるので、口頭の引き継ぎをメモ1枚にまとめた
引っかかった/うれしかったこと:「これがあると聞きやすい」と言われた
なぜそうしたか:自分が入りたてのとき、何度も同じことを聞くのが気まずかったから
日常の例でも同じように書ける。
いつ・どこで:一人暮らしを始めた頃、自炊
自分がやったこと:作り置きを日曜にまとめて作るサイクルに変えた
引っかかった/うれしかったこと:平日の「今日どうしよう」がなくなって楽になった
なぜそうしたか:疲れて帰った日に限って外食して、金も気分も削れていたから
4行目の「なぜそうしたか」だけは、後で効いてくる。ここに、あなたが何を面倒に感じ、何を良しとする人間かが出る。1件が3分もかからないので、思い出したそばから書き溜めていく。10件も並べば、もう「ない」とは言えなくなっている。
並べてから、共通点を探す
メモが溜まったら、「自分の強みは何か」を先に決めないこと。抽象的な強みを一つ立てて、それに合う経験を後から探すと、話が借り物になる。順番を逆にする。
具体例を10件並べて、眺める。似たことを繰り返していないか。バイトのメモ作りも、自炊の作り置きも、根っこは「同じ手間を二度かけたくない」だったりする。それが見えたら、それがあなたの強みの候補だ。強みは頭で決めるものではなく、やったことの中から後から見つかる。
面接で話す候補を選ぶときの目安は、「なぜそうしたか」を自分の言葉で説明できるかどうか。うまくいったかどうかは二の次でいい。途中で失敗した話でも、そこで何を考えて次にどう動いたかが語れるなら、十分に持ちネタになる。逆に、結果は立派でも「なんとなく続けた」だけの経験は、聞かれると詰まる。
おわりに
ガクチカは、これから新しく作るものではなくて、もう済ませたことに後から名前をつける作業だ。棚卸しをしてみると、「何もしていない一年」だと思っていたのが、ただ記録を見返していなかっただけだと分かることが多い。
カレンダーが白いのは、予定がなかったからで、あなたが生きていなかったわけではない。まずは材料を、机の上に並べるところから。文にまとめるのは、それが十分に集まってからでいい。
参考資料
- 専修大学 就職ガイド 自己分析(過去の経験の振り返り、強みを具体例から考える観点):https://www.senshu-u.ac.jp/career/Job_Hunting_Guide/research_01.html
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