自己PRの強みは、日常のふるまいの中にある
自己PRの欄を前にして、まず頭に浮かぶのは「協調性」「継続力」あたりだと思う。書いてはみたものの、なんだか自分のことを言っている気がしない。同じ言葉を、たぶん他の何万人も書いている。その違和感は正しい。問題は、強みが無いことではなく、探し始める場所を間違えていることのほうが多い。
言葉から探すと、他人のものになる
「協調性」や「継続力」は、強みの名前としてすでに完成しすぎている。完成した言葉から始めると、そこに合いそうなエピソードを後から探すことになる。順番が逆だ。この順番だと、話が「その言葉を証明するための材料集め」になって、どこかで見た自己PRに似てくる。
強みは、まだ名前がついていない自分のふるまいのほうに埋まっている。だから探すのは言葉ではなく、行動から始める。
日常のふるまいを三つの角度で見る
大きな実績を思い出そうとしなくていい。むしろ、意識せずにやっていることのほうが手がかりになる。次の三つの角度で、最近の自分を振り返ってみる。
一つ目は、頼まれてもいないのについやってしまうこと。会議で誰も書いていないと議事メモを取り始める、旅行の計画で自然と時刻表を調べる役になる、といった類い。二つ目は、人から礼を言われたり任されたりすること。「これはあなたに聞くと早い」と回ってくる用事には、本人が気づいていない強みが出やすい。三つ目は、やっていて時間を忘れること。苦にならない作業には、その人の得意の芯がある。
この三つの重なりに、名前のつく前の強みがある。
軽いメモとして、思いついた行動を五つほど箇条書きにしておくといい。長く書く必要はなく、「バイトのシフト表をいつも自分が組んでいた」くらいの一行で十分。ここではまだ強みの名前をつけない。行動だけを並べる。
説明できる経験を一つ選ぶ
行動が並んだら、その中から「なぜそうしたか」まで話せるものを選ぶ。自己PRで効くのは、派手な経験ではなく、動機と行動と結果を自分の言葉で説明できる経験のほうだ。
たとえばシフト表を組んでいた行動なら、なぜ引き受けたのか(誰かが困っていたから、単純に表を作るのが好きだったから)、具体的に何をしたのか(希望を聞いて回った、急な欠勤に備えて代われる人を先に把握した)、どうなったのか。この三点が埋まる経験を選ぶ。埋まらない経験は、たとえ立派でも今回は使わない。
過去の経験を掘り起こすところから始めてもいい。[1]
ラベルは、人柄が見える高さに合わせる
選んだ経験に、最後に名前をつける。ここで抽象度の調整が要る。
高すぎるラベルは、また「協調性」に戻ってしまう。かといって低すぎると、名前が行動描写そのものになる。「シフトの希望を全員から聞いて急な欠勤にも備えて表を組み直す力」——これは強みの名前ではなく、あらすじだ。長い。
ちょうどいいのは、その行動から透けて見える人柄のところ。上の例なら「人の予定に細かく気を配れること」あたり。聞いた相手が「ああ、そういう人なんだな」と一言で受け取れる高さに置く。
記入例
- 強み:段取りよく人を動かせること
- 具体例:サークルの合宿で、班分けと移動と食事の担当を先に決めて配ったら、当日の混乱がほとんど無かった
- 仕事での活かし方:複数の人が関わる作業で、抜けや重複が起きる前に手順を組む役に回れる
強み・具体例・仕事での活かし方の三つがそろうと、面接でそのまま話せる形になる。[2]
強みは、まだ他人に見せていないだけ
自己PRが書けないのは、強みが足りないからではなく、自分のふるまいにまだ名前をつけていないからだ。名前をつける作業は、就活のためだけのものでもない。自分が何を苦にせずやれる人間なのかを、少し言葉にして持っておくと、この先どんな仕事の話を聞いたときも「これは自分に向いていそうだ」の勘が少し当たるようになる。
協調性という言葉を捨てる必要はない。ただ、その言葉に行き着く前に、あなたが実際に何をしていたかを先に見る。順番さえ変えれば、同じ言葉でも中身は自分のものになる。
参考資料
- 専修大学「就職活動ガイド 自己分析」 https://www.senshu-u.ac.jp/career/Job_Hunting_Guide/research_01.html
こんなときに