逆質問は「まだ知りたいこと」を質問に変えるだけ
面接の終わりに「何か質問はありますか」と言われて、頭が白くなる。前の晩に検索した「逆質問 例」の一覧を思い出そうとするけれど、どれも自分の言葉に聞こえない。仕方なく「特にありません」か、暗記した一文を読み上げる。
この気まずさの原因ははっきりしている。検索で出てくるのは「誰かの質問」であって、あなたが今この会社に対して知りたいことではないからだ。だから借り物に聞こえる。逆質問がうまくならないのではなく、そもそも他人の質問を運んでいるだけなので、うまくいきようがない。
やることは、質問の在庫を増やすことではない。あなたの中にすでにある「まだ分からない」を、質問の形に直すことだ。
逆質問のもとは二か所にしかない
逆質問は、いい質問を当てる試験ではない。面接のなかで、答える側だったあなたが唯一こちらから聞ける時間、というだけのものだ。だから難しく考えず、材料がどこにあるかだけ押さえておく。
材料は二か所にある。ひとつは面接が始まる前、会社の情報を読んでいるとき。もうひとつは面接の最中、相手の説明を聞いているとき。どちらも「もう少し知りたい」「そこ、どういう意味だろう」と引っかかった瞬間が、そのまま逆質問の種になる。
面接前:読みながら引っかかったところを残す
会社のサイトや募集要項を読むと、たいていは「なるほど」で流れていく。駅から近い、若手が活躍、風通しがいい。読み終えても、ノートには「駅から近い」しか残っていないこともある。
見てほしいのは、なめらかに読めた部分ではなく、少し詰まった部分だ。事業の説明が二つあってどっちが主力なのか分からなかった。「若手が活躍」とは書いてあるが、具体的に何年目で何を任されるのかが読み取れなかった。こういう小さな引っかかりを、読んでいるその場でメモしておく。あとから思い出そうとしても消えている。
記入例
・サービスが2つあるけど、新人はどちらに配属されることが多い?
・「若手が活躍」の若手って、何年目くらいをイメージしている?
・去年から始めた事業、社内ではどのくらいの位置づけ?
この時点では質問文として整っていなくていい。引っかかりの言葉で残しておけば十分だ。
面接中:説明の中に穴を見つける
もっと新しい材料は、面接そのものの中にある。相手が仕事や事業を説明してくれるとき、こちらは緊張して「聞き逃さないように」とだけ思いがちだけれど、そこで「今の話、もう少し知りたいな」と感じた点こそ、いちばん自然な逆質問になる。
たとえば面接官が「うちはチームで動くことが多い」と言ったとする。ここで「チームというのは、何人くらいで、どんな役割で組むんですか」と聞ければ、それはさっき生まれたばかりの、あなたの本物の疑問だ。検索した一覧のどれよりも自分の言葉になる。
そのために、手元に小さなメモを一枚。項目を増やす必要はない。
軽いメモ(4行で足りる)
・気になった一言:
・それについて知りたいこと:
・自分がなぜ気になったか:
・(前もって用意した質問):
面接中に全部埋めるのは無理なので、「気になった一言」だけ走り書きできれば上出来だ。あとの行は、聞くときに頭の中で足せばいい。
「なぜそれを聞くの」に耐えるか、で選ぶ
逆質問を投げると、相手から「どうしてそこが気になったんですか」と返ってくることがある。これは意地悪ではなく、あなたが何を大事にしているかを知ろうとしているだけだ。
だから、逆質問を選ぶときの物差しはひとつでいい。その質問に「なぜ聞くのか」を自分で答えられるか。 答えられない質問は、たいてい「面接官に好かれそうだから」で選んだ借り物だ。逆に、答えられる質問は、あなた自身の関心とつながっている。
記入例(理由まで用意した形)
質問:新人のうちは、チームのどのあたりの仕事から始まりますか。
なぜ聞くか:最初から一人で抱えるより、周りに聞ける環境で覚えたいので、入り方が知りたい。
理由の側は、立派でなくていい。「一人で黙々とやるより人に聞きたい」でも、りっぱな関心だ。むしろこういう素直な理由のほうが、次に何か聞かれても言葉に詰まらない。
自分の言葉にする最後のひと工夫
同じ「配属について知りたい」でも、「配属はどうやって決まりますか」と聞くのと、「今日お話を伺って二つの事業のどちらにも関心が出たんですが、新人の配属はどう決まりますか」と聞くのとでは、後者のほうがあなたの質問になる。
差は、質問の前に自分の観察を一言くっつけたかどうかだけだ。「読んでいて」「今日聞いて」「気になったのは」——こういう出どころを添えると、質問はとたんに借り物でなくなる。テクニックというより、種がどこから来たかを正直に言っているだけだ。
おわりに
面接は、ほとんどの時間をこちらが答えることに使う。逆質問は、その中でひとつだけ立場が入れ替わる、短い時間だ。うまい質問で加点を狙う場所というより、「この会社のことを、まだこれだけ知らない」と正直に差し出せる場所だと思っておくと気が楽になる。
知りたいことが何も浮かばない日もある。それは準備不足というより、今日のところはその会社に強く引っかからなかった、というだけのことかもしれない。無理に一覧から借りてこなくていい。次の面接で、ふと「あれ、それ聞きたい」と思える会社に出会えれば、逆質問はもう半分できている。
参考資料
- 専修大学 就職ガイド「面接試験」 https://www.senshu-u.ac.jp/career/Job_Hunting_Guide/practice_06.html
こんなときに